プランB         村尾信尚 

 デフレ、高い失業率、巨額の財政赤字、少子高齢化の進行、株価の低迷、国際競争力の低下、廃棄物問題の深刻化・・・冒頭から暗くなるような話題を持ち出してごめんなさい。
 みんなこうした状態から抜け出したい、何とかしたい、と思っているはず。
 しかし、私たちはともすれば、「人々に要求される生き方の変革があまりにも極端なので、彼らは今払わなければならない犠牲よりは将来の破局を選ぶ」(エーリッヒ・フロム)ことになってしまいがちです。そのようなことにならないよう、私たちは辛くとも改革に乗り出さなくてはいけません。今を夜明け前とするのか、それとも日没前になってしまうのか、これを決めるのは他でもない、私たち一人ひとりなのです。政治や行政が何とかしてくれるだろうという甘えはもう通用しません。

 今こそ、私たち自身の頭で考え、私たち自身が動く時ではないでしょうか。私が行革推進ネットワーク WHY NOT を通じて「選挙の公約は住民がつくろう」と呼びかけているのも、こうした考えによるものです。

 さて、改革の必要性は理解できるけれど、それでは何をどう変えるのか?私は、社会を捉える私たちの視点の位置がポイントになるのではないか、と考えています。ここで、今の社会をいろいろな切り口で切り、2つの相対する図式にしてみます。
@「生産者」vs.「消費者」
A「タックスイーター」vs.「タックスペイヤー」
B「官」vs.「民」
C「国」vs.「地方」
D「モノ・カネ」vs.「こころ」
E「開発」vs.「環境」
F「障害のない人」vs.「障害のある人」
G「大企業」vs.「ベンチャー」
H「日本人」vs.「在日外国人」
I「現世代」vs.「次世代」

 取り敢えずこのように分けてみて、各項目の前者に掲げているものをAグループ、後者をBグループとしましょう。戦後、経済大国を目指した日本は、どちらかと言えば、このAグループにその軸足を置いてきた、あるいはBグループに対する問題意識が希薄であった、と思います。これまでは社会の仕組みを考えるにあたり、Aからの視点がメインで、Bからの視点はサブであったかもしれません。

 しかし、これからは今までのようなスタンスでは、問題は解決しません。牛肉など食品の安全性が指摘されるとき、従来の消費者行政は厳しく問い直されなければなりません。「医者」より「患者」の立場で、「先生」より「生徒」の立場で医療や教育のあり方を考えることが必要です。公共事業のあり方が議論されるとき、納税者の視点が重視されなければいけません。行政組織の改革を進めるにあたっては、「民間でできるものは民間で」の発想が大切です。このようにして考えていくと、Bグループのサイドからの視点が、これからの社会のグランドデザインを描くうえで非常に重要です。

 経済社会の改革が叫ばれる今日、現行の政策体系に取って代わるオールタナティブな政策パッケージを打ち出すには、先ず私たちはBグループのサイドに立って、一つ一つ問題提起をしていくことが大切ではないでしょうか。そして、この一つ一つの問題提起の集積が、新しい社会をリードする政策体系をかたちづくることになると思います。消費者、納税者の立場からは「透明性」、民間、地方の立場からは「自立」、こころの豊かさ、環境保護の立場からは「スローライフ」、障害者、外国人の立場からは「ユニバーサル」という概念が浮かび上がってきます。
 オールタナティブな政策パッケージとしての「プランB」。私たち消費者が、私たち納税者が、「プランB」をつくり、その実行を迫っていくことが、今の私たちに求められていることだと思うのです。今を日没前にしないために。


(注)本稿は、北海道自治体学会ニュースレター(2002.12)に私が寄稿した「プランB」を若干加筆したものです。